第6話 ストレージ

昔から、たくさんの物を覚えるときには何かのストーリーと紐づけて、その組み合わせをデータベース化するクセがある。覚えやすいのではなくて、思い出しやすいから。いつからか、この仕組みを「ストレージ」と呼んでる。

 

例えば忘れ物をしないためのチェックリスト。自室のベッドから始まって玄関まで順に、通り過ぎる物と覚えたい物を紐づけていく。

簡単に言うと、ベッドでは携帯の充電器を思い出し、リビングでは財布を思い出し…という感じ。だからそこを通ったときに必ず思い出すし、家を出る前には頭の中で同じルートを繰り返せばダブルチェックできるってわけ。(まあ、それでも忘れ物減らないんだけど。)

 

同じことを、例えば歴代総理大臣を覚えるときにもやってた。頭の中で家を一周すると、

・自室のベッドで目を覚ます(伊藤黒田山縣は眠い)

・自室からリビングに向かう(松方伊藤松方伊藤はお腹がすいてる)

・リビングで二度寝する(大隈山縣伊藤はやっぱり眠い)

って感じで96人(高3当時)全部出てくると。

 

ストーリーといっても何でも良いわけではなくて、

・時系列がある

・ある程度の長さがある

・頭の中で再生できる(何度も見聞きしている)

ってのが大事。特に三番目。だから「駅から家までの道」とか「何百回も聴いたラジオのトーク」とか「電車から見える景色」とかをよく使う。

昔テレビで見た天才キッズは「家から駅までの道」と言ってたけど、なぜか俺は逆。

 

ただこういう覚え方って、ストレージを増やすのにも勿論エネルギー使うわけ。だから馴染みのあるストーリーがいいし、なるべく同じストーリーを使い回したい。けどそれをすると、記憶がダブって上手く思い出せないことがある。

例えば「大隈重信の次の総理大臣って誰だっけ?」と思ったとき、リビングで二度寝をしようとしたところで別の記憶とダブって「浜松町…?(山手線の駅も同じので覚えてる)」とかなることがある。

 

だから最近観念して、ストレージを増やすために色々とネタ集めをしている。いつもと違うルートで散歩をしてみたり、よく行く釣り船のルートと景色を覚えてみたり。

やっぱいいもんですな、散歩って。